最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)960号 判決 1966年10月13日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について。
いわゆる白地手形は、満期にこれを支払のため呈示しても、裏書人に対する手形上の権利行使の条件が具備しないのであつて、後日右白地を補充しても、右呈示が遡つて有効になるものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和三一年(オ)第五二九号、同三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁参照)。所論は、確定日払の約束手形においては、振出日の記載は手形上の権利の内容の確定のために必要でないから、その記載のない手形もこれを無効と解すべきでない旨主張するが、手形法七五条、七六条は、約束手形において振出日の記載を必要とするものとし、手形要件の記載を欠くものを約束手形としての効力を有しないものと定めるにあたり、確定日払の手形であるかどうかによつて異なる取扱いをしていないのであつて、画一的取扱いにより取引の安全を保持すべき手形の制度としては、特段の理由のないかぎり法の明文がないのに例外的取扱いを許すような解釈をすべきではない。
上告人(原告)は、振出日白地で振り出された本件各約束手形を各満期日に白地のまま支払場所に呈示した旨を主張するのであるから、右各手形の裏書人である被上告人(被告)に対する本件手形金請求を排斥した原判決は相当である。それ故、所論は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)